「ベンチャー」という言葉の解釈とビッグワードの怖さ
私は今、採用に携わっているわけですが、いろいろな会社の説明を聞いていると、そこかしこに「ベンチャー」という言葉を聞くことができます。
「ベンチャー」という言葉が意味するものは?
いろいろな会社で使われる「ベンチャー」という言葉を聞いていると、それぞれ独自の解釈で使われていることがわかります。
- 活発な会社
- どんどん事業が生まれる会社
- 小さい会社
- 独立心旺盛な会社
- 成長著しい会社
- 不安定な会社(いい意味で)
- 隙のある会社(だから主役を張れるよ!というニュアンスで)
- 変化を積極的に受け入れる会社
- 出来上がっていない会社(だからどんどん変えていけるよ!)
などなど・・・。
ですから、売上が1000億円以上になっているのに「ベンチャー」とおっしゃる会社や、もちろんスタートアップの会社が「ベンチャー」、子会社を積極的に若手に任せることで「ベンチャー」、挙げ句の果てには圧倒的巨人が「本物のベンチャー」と「草ベンチャー」という侮蔑的な言葉を投げてきたり*1します。
で・・・ベンチャーってなんなのよ!?と思ったりしませんか。
ビッグワードで考える怖さ
「ベンチャー」といった、受け取る人によって意味が異なる言葉をビッグワードと呼びます*2。ビッグワードとは、本来はSEO用語で「多く検索される単語」と言う意味ですが、多く検索される単語というのは「生命保険」「サッカー」など、汎用的な言葉が多く、実際に検索する人が何を求めているかはわかりません。
「ベンチャー」という言葉も、最初に並べたように多くの意味を含みます。「僕はベンチャーに行きたい!」と考えたり言ったり書いたりしていても、売上1000億円の会社とスタートアップ、同時に比較する人はそう多くはないでしょう。
結局、ビッグワードが何を意味するかなど、受け取る人や言波を発する人にしかわからないわけで、結局自分が何を求めているか、を考えなければ単語の意味がわかったとしても意味がありません。
一番怖いのは、「ベンチャーに行きたい!」と言いつつ、その言葉が持つイメージや「ベンチャーに行く」という発言の気持ちよさが先行して詳しく考えないケースです。
実際の面談例
Q:働くことでどんなことをやりたいの?
A:楽しく仕事をして、世の中のためになりたいと思っています。
Q:世の中のためになる、ってどういうこと?
A:人と関わって、人々の生活を良くすることです。
太字はビッグワードを解釈しきれていないところです。
楽しいとはどういうことか?
雑多なデータを分析し、その中から新しい傾向を見つけ、提供することなのか?
お互いに刺激しあえる仲間と一緒に、日々成長を実感できる状態なのか?
楽しむためのアプリケーションを次々と開発し、リリースし、評価される状態なのか?
人と関わるとはどういうことか?
ユーザの問い合わせを受けるのは人と関わることなのか?
激しく議論を交わし、社内向けのシステムを作るのは人と関わることなのか?
ロボットを作って、最終的には人が使うものを作るというのは人と関わることなのか?
人と関わらない仕事はまずありえない中で敢えてその言葉を使う意味はあるのか?
こういうことを考えておかないと、そのうち「あれ?なんでベンチャーに行ってたんだっけ?」となること請け合いです。
こうならないために
必ず、自分の考えはビッグワードで止めるのではなく、誰が聞いても同じ意味に聞こえる単語レベルまで細かくしておきましょう。とはいえ、自分の考えを客観的に見る、というのは訓練も必要ですし、なかなか出来ませんので、私が行う面談ではこのあたりを徹底的に解きほぐしています。
というのも、ガイアックスでは選考の中で「価値観の一致」を非常に重視します。社会的な問題意識から事業が生まれることの多いガイアックスでは、いくら能力が高くても同じ方向性を向いて仕事をすることができなければ十分な力を発揮することが出来ないからです。
そして、この「ビッグワードを自分の言葉に落としこむ」という作業は、その人の価値観が色濃く表現されます。
- どのような人と働きたいのか?
- どのような働き方をしたいのか?
- どのような意識で働きたいのか?
などなど・・・。ですから、自分がどの会社を選ぶかを考えるときには、必ずこの「ビッグワードを自分の言葉に落としこむ」という作業をやっておきましょう!